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パートタイム労働法改正のあらまし

1 今回のパートタイム労働法の改正の経緯

 短時間労働者(パートタイム労働者)の均等・均衡待遇の確保を推進することを目的とした改正「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム労働法)が、平成27年4月1日から施行されています。
 パートタイム労働者は平成25年には1568万人に達し、雇用者総数(5399万人)の約3割を占めています。パートタイム労働は、子育て等の理由により就業時間に制約のある労働者が従事しやすい働き方として、女性、高齢者、学生アルバイトなど、多くの方が選択をしています。
 しかしながら、パートタイム労働者の待遇は必ずしも十分といえるものではなく、改善の必要があるとの指摘から、平成5年にパートタイム労働法が制定され、数次の改正が重ねられてきています。平成19年には、通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者の差別的取扱の禁止、パートの均衡待遇の確保の促進、労働者から求めがあった場合の待遇に関する説明義務の導入等が定められました。
 今回の改正は、平成19年改正をさらに一歩進めて、パートタイム労働者の一層の均等・均衡待遇の確保や待遇に対するパートタイム労働者の納得性の向上も目指すものです。また、労働契約法の有期労働契約であることを理由とする不合理な労働条件の禁止規定等との整合性を図った点も特徴といえるでしょう。
 今回の改正は、@全てのパートタイム労働者を対象とした「短時間労働者の待遇の原則」の新設、A差別的取扱い禁止の対象となる「通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者」の対象範囲の拡大、Bパートタイム労働者の雇い入れ時の事業主による説明義務の導入等が柱となっています。以下では、その改正内容の概要を紹介します。

2 改正パートタイム労働法の概要

(1)短時間労働者の待遇の原則(パートタイム労働法8条)

 パートタイム労働法8条は、事業主が、雇用するパートタイム労働者の待遇と正社員の待遇を相違させる場合は、その待遇の相違は、職務の内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならないとします。
 8条は、広く全てのパートタイム労働者を対象とした待遇の原則として創設されたものです。今回のパートタイム労働法改正に先立ち、労働契約法20条において「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」が設けられたこともあり、労働契約法とパートタイム労働法との整合性をとる必要から設けられました。
 8条の「待遇」には、すべての賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用のほか、休憩、休日、休暇、安全衛生、災害補償、解雇等労働時間以外の全ての待遇が含まれ、不合理性の判断は、パートタイム労働者と通常の労働者との間の待遇の相違について、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、個々の待遇ごとに判断されるものとされています。
 事業主は、パートタイム労働者の待遇に関するこうした考え方を念頭に、パートタイム労働者の雇用管理の改善を図ることが期待されています。具体的には、事業主が、自主的に、その雇用するパートタイム労働者の就業の実態(職務内容や人材活用の仕組みなど)と待遇との関係について、この短時間労働者の待遇の原則を念頭に検証を行い、必要に応じて、その待遇の改善を行うことが考えられます。

(2)通常の労働者と同視すべきパートタイム労働者の範囲の拡大

 パートタイム労働法9条は、パートタイム労働者のうち、@職務内容が正社員と同一、A人材活用の仕組み(人事異動等の有無や範囲)が正社員と同一、の2つに該当すれば、賃金、教育訓練、福利厚生施設の利用をはじめ、全ての待遇について、通常の労働者との差別的取扱いを禁止しました。
 改正前のパート法では、上記@Aに加えてB契約期間が無期又は実質的に無期労働契約という要件(無期労働契約要件)がありましたが、法改正にあたり削除されました。これにより差別的取扱いの禁止の対象となるパートタイム労働者の範囲が拡大されています。

(3)均衡処遇の原則と、職務の内容に密接に関連して支払われる通勤手当の取り扱い(パートタイム労働法施行規則3条)

 パートタイム労働法10条は、事業主は、パートタイム労働者の賃金の決定にあたり、通常の労働者との均衡を考慮しつつ、パートタイム労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験等を勘案して、その賃金(通勤手当、退職手当等を除く)を決定するように努めなければならないとします(この条文は条文番号が9条から10条に変更となっただけで改正はされていません)。対象となる賃金は、基本給、賞与、役付手当等の勤務手当及び精皆勤手当など職務の内容に密接に関連して支払われる賃金です。通勤手当(職務の内容に密接に関連して支払われるものを除く。)、退職手当、家族手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当その他名称を問わず、職務の内容と密接な関連を有する賃金(以下「職務関連賃金」という。)以外の賃金については、10条の対象外とされています。
 なお、通勤手当については、パートタイム労働法施行規則3条が改正され、同条1号カッコ書で、「職務の内容に密接に関連して支払われるもの」は10条の対象となるとされました。具体的には、現実に通勤に要する交通費等の費用の有無や金額いかんにかかわらず、一律の金額が支払われている場合など、名称は「通勤手当」であるが、実態としては基本給などの職務関連賃金の一部として支払われているものは、10条の均衡処遇原則が適用されると解されていますので注意が必要です。

(4)パートタイム労働者の納得性を高めるための措置

@雇入れ時の事業主の説明義務の新設
 パートタイム労働者の納得性を高めるために、事業主はパートタイム労働者を雇い入れたときは、速やかに、事業主は、パートタイム労働者の雇用管理の改善等に関する事項に関し、講ずることとしている措置の内容について、パートタイム労働者に説明しなければなりません(パートタイム労働法14条1項)。説明義務が課せられる事項は、労働条件の文書交付等、就業規則の作成手続、短時間労働者の待遇の原則、正社員と同視すべきパートタイム労働者に対する差別的取扱いの禁止、賃金の決定方法、教育訓練、福利厚生施設、正社員への転換を促進するための措置です。
 なお、事業主は、雇い入れた後、その雇用するパートタイム労働者から求めがあったときも、上記措置を講ずべきとされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該パートタイム労働者に説明しなければなりません(パートタイム労働法14条2項)。
Aパートタイム労働者からの相談に対応するための体制の整備と周知
 事業主は、その雇用するパートタイム労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備しなければなりません(パートタイム労働法16条1項)。体制整備の例としては、相談担当者を決めて対応させる、事業主自身が相談担当者となり対応する、等が考えられます。相談窓口の存在を掲示などによって周知することも重要です。
B相談窓口の文書等による明示
 労働者の雇入れに際しては、賃金や労働時間などの労働条件を明示する必要があり(労基法15条)、パートタイム労働者を含むすべての労働者に適用されます。他方、パートタイム労働者については、@昇給の有無、A退職手当の有無、B賞与の有無、Cパートタイム労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口(相談担当者の氏名、相談担当の役職、相談担当部署等)を、雇入れに際して、事業主が文書の交付等により明示しなければなりません(パートタイム労働法施行規則2条)。今回の改正に伴いCが追加されていますので留意してください。
C親族の葬儀のために勤務しなかったことを理由とする解雇等(指針第3の3の(3))
 パートタイム労働者が親族の葬儀等のために勤務しなかったことを理由に、解雇や契約の更新拒否が行われることは適切ではないことが、指針(平成26年7月24日厚生労働省告示第293号)で示されています。

(5)パートタイム労働法の実効性の確保のための措置

 パートタイム労働者の雇用管理の改善を図るために厚生労働大臣の是正の勧告に従わない事業主については、企業名を公表することができることとなりました(パートタイム労働法18条の2)。また、事業主がパートタイム労働者の雇用管理の改善等を図るための報告をしないまたは虚偽の報告を行った場合には、20万円以下の過料に処するとの規定が新設されています(パートタイム労働法30条)。